進化を続けるオンラインコミュニケーション
リソースを持たない中小企業が生き残るために

今後、ますますオンラインコミュニケーションの進化、高度化が進む中、ノウハウを持たない中小企業や地方の自治体・学校といった組織はどのようにオンラインを通じたメッセージの発信・ブランディングを行うべきか。
「相棒」「ハゲタカ」などTVドラマや映画制作を手がけてきた、映像演出のプロである近藤一彦氏を迎え、「オンラインコミュニケーションの今と未来」をテーマに対談を行いました。

監督・脚本家

近藤 一彦

Kazuhiko Kondo

映像制作会社・sasuga de magure 株式会社、代表取締役。
映像監督・脚本家。演劇ユニット・DC虎馬デパートメント、主宰・作・演出。
主にテレビドラマの演出を手掛ける。代表作は2時間ドラマ『死命(演出・監督)』『欠点だらけの刑事(演出・監督)』『相棒(演出・監督)』『海猿(演出補)』など。
コロナ自粛期間、オンライン会議と演劇配信で東京を離れて活動。2022年より企業・商品・サービスのブランディングを目的としたWEBドラマの制作をしながら日本一周を計画中。車中泊オンライン会議に挑戦!

みんながもっとうまく発信できれば、世の中はきっと変わる

近藤監督 OoOという社名はどこから来てるの?


岡田 Out of Officeの頭文字です。オフィスを離れても同じように仕事ができる環境って今すごく求められていますよね。働く場所を選ぶ自由のある社会を実現したい、そんな思いからOoOという社名になりました。


近藤監督 なるほど。物理的な距離を超えるためにはインターネット環境は欠かせないから、OoOでは離れている人たちを繋ぐオンラインのコミュニケーションをサポートしますよ、ということなんだね。


岡田 そうです。あと、OoOのロゴは、石の形を表しているんですけど、石って水で流されてぶつかりながら削れて芯が残るじゃないですか。それって企業や個人のストーリーみたいだなと思って。何かを発信する時、背景にあるストーリーってすごく大事な要素だと思うんです。
たとえば、去年「冷凍餃子」「手間抜き」がツイッターでトレンド入りしましたよね。あれは、疲れて帰宅して冷凍餃子を食卓に出したら、夫に「手抜き」と言われてしまった女性の投稿に、味の素冷凍食品さんが「冷凍食品を使うことは、手抜きではなく“手間抜き”です」と公式ツイッターに投稿したところ、44万いいね!がついたんです。この後、味の素さんはどれだけ手間をかけて冷凍食品を作っているかがわかる動画を作成してそれがさらにバズりました。まさに企業や個人のストーリーが共感→拡散された実例ですよね。


近藤監督 商品の販促にストーリーは必要だというのは同感です。“私たちはこれだけの手間を担って提供しています”という味の素のストーリーというかコンセプトを伝えることで、生活者は同じ冷凍食品でもバックヤードのストーリーを知っている方をつい手に取ってしまう。あとはストーリーだけじゃなくて、手間を買うことでできた時間で夫婦で映画をみようとか、家族ともっと一緒に過ごそうとかそういったことも提案できたらいいよね。感情を乗せることでストーリーも伝わりやすくなるし。


岡田 新しい価値の提供ですね。そういったこともしていきたいと思っています。
でも、なかなか中小企業や地方の自治体が自分たちの伝えたいことを世の中の人々の心を動かすようなストーリとして作り上げることって本当に難しいんです。さきほどの冷凍食品の事例は、味の素さんのような大企業だからこそできたことなんですよね。おそらくツイッターがバズっても中小企業だとそこで終わってしまう。
そこで、私たちはクリエイティブの力やスキルを使って、そのお手伝いがしたいと考えているんです。いろいろな物を作ってきたクリエイターなら、物事をさまざまな視点で見たり、切り取るスキルがとても高いので、予算がなくてもいろんな手法で物語を作って伝えることができる。みんながもっとうまく自分たちの強みや魅力を発信できるようになれば、世の中ってきっと変わっていくと思うんです。


近藤監督 背景ストーリーだけじゃなくて、ストーリーテリング的な手法もあるよね。ある保険会社がすごく感動的なショートドラマのウエブCMを作って加入者が増えたという事例があるんだけど、本来なら保険って不幸の先の商品だから買いたいものではないんだよね。でも、ストーリーを与えてエンターテインメントにすることで共感してもらえる。ただ商品を紹介する映像なんて誰も見ないもん。
ただストーリーテリングって何も目新しい物ではなくて、実は昔からずっとしてきたことなんだよね。たとえば、子供達に夜になったら怖い人が出る、みたいな話をして自主的に早く帰るようにするとか、それもひとつのストーリーテリング。単に「暗くなる前に帰りなさい」というよりも「怖い」という感情が乗った方が絶対に伝わるもんね。何千年も前から神話が存在するように、もう本当に昔から人間は「物語」で人に伝えるということを発明してたんだよ。
昔と現代が違うのは、身近な人に話していたのがオンラインで離れた人に伝えられるということ。離れている人の感情を動かすためにはストーリにプラスアルファの技術が確かに必要になってくるよね。


岡田 そうですよね。オンラインでのストーリーテリング、いわゆるブランディングを成功させるにはちゃんと手法があって、それを知っているか知っていないかが格差に繋がっていると思います。たとえば、地方と首都圏、大企業と中小企業とか。そこには大きな格差があるんです。

オンラインの時代に求められるのはクリエイティブの力

−近藤監督は、ドラマや映画の制作をたくさん手掛けられているので、画面を通した「演出技術」のプロですよね。今や個人でもオンラインで何でも発信できる時代ですが、画面越しの人の感情を動かすコツってありますか?


近藤監督 ドラマや映画とは少し違うかもしれないけど、例えばリモートワークで普段はスーツの上司がポロシャツを着ていただけで印象って随分変わりますよね。あと背景に絵が飾ってあったり、釣竿が見えたら、会社では知り得なかった側面が見える。わざと画面に入れることでちょっとしたブランディングってすぐにできます。
でも、オンラインミーティングって大体ちゃんとした服を着て背景は白い壁、みたいな感じじゃないですか。もっと自分の個性を出してもいいと思うんですよね。私ってこういう人なんですよって、せっかくアピールできる場ができたのにやらない人が多いな〜とは思いますね。


岡田 なんとなくオンラインになることがデメリットだと感じている人が多いように思うんですけど、そうではないですよね。やり方次第でメリットもかなり感じられると思うんです。それをもっと伝えたい。


近藤監督 セルフブランディングが難しければ、やはりプロに頼るのが一番だろうね。


岡田 先ほども言いましたが、普段から物事を客観視していて、フィルターを通して見ることに慣れているクリエイティブ業界の人ってそういうことにめちゃくちゃ強いんですよね。なにかを作るだけではなくて、作ることで培ってきた思考や視点、アイデアをもっと幅広く生かせるんじゃないかって思っています。今の時代の企業ブランディングはまさにこのスキルを求めていて、大企業じゃなくても、この手法やスキルがあれば予算をかけずにいろんなことが発信できるようになりますよね。


近藤監督 画面の中の人って昔の感覚で言うと「タレント」じゃないですか。ちょっと距離がある。でも逆に今は画面の中に入れちゃうから、自分もタレントになれる時代。相手にどう見られるかを計算して演出ができる。たしかにそれには客観性やアイデアが不可欠だから、やったことのない人には難しいだろうね。


岡田 そうなんです。でもそこさえ補ってあげれば可能性はめちゃくちゃ広がると思うんです。

まだまだ広がるオンラインの可能性

近藤監督 去年(2020年)コロナ禍で2時間ドラマを撮ったんですよ。本来ならロケハンとか打ち合わせとか撮影前にかなり準備をするんですけど、その作品は一回ロケハンをして、あとはオンライン会議を何回かしてできちゃった。ちょっと虚しかったけど、そんな虚しさもすぐに慣れて、できるもんだなと思ったよ。


岡田 今は緊急事態宣言下でオンラインを強要されているから、どうしてもマイナスの感情がでちゃうんですけど、通常に戻ったときにオンラインと対面の価値ってイコールになると思うんですよね。ロケハンだって、行った方がいい場合もあるし予算によってはオンラインで十分ということになるかもしれない。


近藤監督 ほんとそうだよね。昔はこれって対面じゃないとだめなの?っていう議論にすらならなかったもんね。


岡田 まずは交通費や時間の効率化など数値化できるメリットを認識することからですよね。地方や中小企業こそこういうコストの見直しをもっとやっていくべきなんです。その分、余力が生まれて他のことができますし。
地方の中小企業はオンラインの機材を揃える予算もないし、知識がある人もいない。やりたいとは思っていても目の前の業務に追われて余力がないんです。だからなかなか活性化しない。同様の格差は公立高校と私立の進学校など教育の現場にもあって、それが結局社会問題にも繋がっているんですよね。
まずは意識を変えるところから始めないとダメで、オンラインのいろいろなメリットの中から、単に「交通費が浮く」というのがスタートでもいいと思っているんです。


近藤監督 個人レベルの話だと、僕ら世代なんかだと、プライベートを充実させるために東京から地方への移住なんかも考えますよね。あと僕はもう子供が大きいけど、まだ小さい子供がいる人ならどこかの田舎で伸び伸び子育てしながら、オンラインで最高の教育を受けさせられたいって思うんじゃない?

岡田 ですよね。地方に住みたいけど、教育は都心でと考える人が多い。それに結局、今はまだ東京から地方に人が流れても、ほとんどの場合が東京本社から支社に異動しただけのことが多いので、いくら人が来たところで地方の中小は恩恵を受けづらいんですよね。
だからこそ、地方や中小企業は、自分たちでやっていく必要があると思っているんです。


近藤監督 ちょっとのアイデアでいろんな可能性が広がるよね。今や自分たちで発信できるツールもプラットフォームもあるんだから、広告代理店なんてそのうちなくなっちゃうかもしれない。企業自体が発信するのは眉唾な感じがするけど、それを「これいいじゃん」って第三者に拡散してもらうことを前提にしたものを作ることができれば、絶対に自分たちでやった方が安いし早いし届きやすい。


岡田 そうですよね。映画とかはずっとそうだったわけですよね。見た人がレビューを書いて、そこから人気が出るという流れがあって。それが企業のビジネスに広がってきているというか。


近藤監督 企業や自治体、学校なんかは今後オンラインでのセルフブランディングが必須になっていくだろうね。ますますOoOさんのようなノウハウを持った企業さんに活躍してもらわなきゃ。


岡田 はい、がんばります(笑)。できることは無限にあると思うので、これから先がとても楽しみです。監督、今日は本当にありがとうございました。


近藤監督 こちらこそ、ありがとうございました。

Top